Phase III study of ivonescimab plus chemotherapy versus tislelizumab plus chemotherapy as first-line treatment for advanced squamous non-small cell lung cancer (HARMONi-6)
(Shanghai Chest Hospital)
*国内未承認
進行扁平上皮非小細胞肺がん(sq-NSCLC)の一次治療において、PD-1とVEGFに対する二重特異性抗体のivonescimabと化学療法との併用が、チスレリズマブと化学療法との併用に比べて、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、第Ⅲ相HARMONi-6試験の中間解析で示された。このPFSの中間解析はあらかじめ規定されていたもので、観察期間中央値10.28カ月(データカットオフ日:2025年2月28日)、PFSイベント計221件に基づくものであり、全生存期間(OS)はこの時点で未成熟であった。
本試験は、中国で実施された多施設無作為化二重盲検第Ⅲ相試験で、ステージⅢB~Ⅳのsq-NSCLC患者が対象であった。適格基準は、病理学的にsq-NSCLCが確認され、全身療法治療歴がなく、ECOG PSが0または1、EGFR遺伝子変異およびALK転座が陰性であることなどであった。対象患者をivonescimab群とチスレリズマブ群に1:1の割合で無作為に割り付け、ivonescimab群にはivonescimab(20 mg/kg、3週毎)と化学療法(カルボプラチン AUC 5+パクリタキセル 175 mg/m2を3週毎最長4サイクル)を併用し、維持療法としてivonescimab単剤(20 mg/kg、3週毎)を投与した。一方、チスレリズマブ群にはチスレリズマブ(200 mg、3週毎)と同一の化学療法を併用し、維持療法としてチスレリズマブ単剤(200 mg、3週毎)を投与した。両群とも、維持療法は最長24カ月または忍容できない毒性が発現するまで継続した。層別因子は、病期(ⅢB/ⅢC期 対 Ⅳ期)、PD-L1発現(TPS ≧1% 対 <1%)とした。主要評価項目は、独立放射線学的評価委員会(IRRC)のRECIST v1.1に基づくPFS、主要な副次評価項目はOSであった。
532例が登録され、両群に266例ずつ割り付けられた。ベースラインの患者背景は2群でおおむね均衡しており、65歳以上がivonescimab群49.2%、チスレリズマブ群47.7%、男性が96.2% 対 89.5%、現・元喫煙者が92.1% 対 86.1%であった。ステージはⅣ期が92.1% 対 92.5%、PD-L1発現はTPS≧1%が2群とも60.5%、このうち≧50%が18.4% 対 23.3%であった。転移部位が3カ所以上有したのは15.8% 対 14.7%であった。
IRRC評価によるPFS中央値は、ivonescimab群11.14カ月、チスレリズマブ群6.90カ月、層別化ハザード比(HR)は0.60(95% CI: 0.46 – 0.78、p<0.0001)と、ivonescimab群が有意に延長した。治験担当医師評価による解析でも同様の結果であった(HR 0.64、95% CI: 0.50 – 0.84)。サブグループ解析では、全てのサブグループでivonescimab群が良好な傾向を示した。PD-L1発現別のHRは、PD-L1陰性集団(TPS<1%)が0.55、陽性集団(TPS≧1%)が0.66、TPS 1~49%の集団が0.63、≧50%の集団が0.71と、PD-L1発現に関わらずivonescimabのベネフィットが認められた。
IRRC評価によるORRはivonescimab群75.9%、チスレリズマブ群66.5%(p=0.008)、PD-L1発現の陰性集団では69.5% 対 61.0%、陽性集団では80.1% 対 70.2%と、いずれもivonescimab群が高かった。DOR中央値は11.20カ月 対 8.38カ月(p=0.0219)であった。
治療関連有害事象(TRAE)は全グレードでivonescimab群99.2%、チスレリズマブ群98.5%、グレード3以上が63.9% 対 54.3%で、両群ほぼ同程度だった。重篤なTRAEは32.3% 対 30.2%、投薬中止に至ったのは3.4% 対 4.2%、死亡に至ったのは3.0% 対 3.8%であった。ivonescimab群で高頻度に発現したTRAEは脱毛症(全グレード 65.4%、グレード3以上 0%)、貧血(53.0%、6.4%)、好中球減少(45.1%、32.0%)、白血球減少(36.1%、10.9%)で、多くが化学療法に関連する事象であった。
免疫関連有害事象(irAE)は全グレードでivonescimab群27.4%、チスレリズマブ群25.3%、グレード3以上が9.0% 対 10.2%、重篤なirAEが8.6% 対 9.8%と同等だった。一方、VEGF関連有害事象はivonescimab群で多かったが(全グレード 46.2% 対 22.6%、グレード3以上 7.5% 対 2.3%)、多くはグレード1~2が占めていた。Ivonescimab群で発現した主な事象は、蛋白尿(全グレード 27.1%、グレード3以上 2.3%)、出血(21.4%、1.9%)、高血圧(10.2%、3.0%)などであった。
監修 秦 明登先生のコメント
IV期扁平上皮肺がんにおけるPD-1とVEGFの二重特異的抗体であるIvonescimabとブラチナダブレットの併用療法の有効性を示す第Ⅲ相試験の結果である。化学療法+PD-1抗体であるチスレリズマブの併用療法に対して、PFS中央値11.1カ月 対 6.9カ月(HR 0.60)と大きな有意差を示した。今後のOSデータの成熟が待たれる。毒性に関してもグレード3以上の有害事象の頻度が10%ほど高かったものの、重篤なもの、投与中止に至ったもの、死亡に至ったもの、irAEの頻度に差はなく、VEGFに関する有害事象も忍容可能なものであった。
同薬剤はPD-L1陽性のNSCLCにおけるペムブロリズマブ単剤との比較第Ⅲ相試験(HARMONi-2)において、PFSおよびOSを有意に延長している。本試験は扁平上皮がんの一次治療での試験であるが、他にも複数のpopulationで同薬剤を使用した比較第Ⅲ相試験が行われており、NSCLCにおける化学療法を席捲する可能性がある。ただし、これらの試験は中国のみで行われているものが多く、本邦も含むグローバルな試験で同様のデータが出るか、注視していく必要がある。