SKYSCRAPER-03: Phase 3, open-label, randomised study of atezolizumab + tiragolumab vs durvalumab in locally advanced, unresectable, stage III non-small cell lung cancer after platinum-based concurrent chemoradiation
(Medical University of Gdańsk)
*国内未承認
切除不能のⅢ期非小細胞肺がん(NSCLC)で根治的化学放射線療法後に病勢進行が認められなかった患者に対する、抗TIGIT抗体tiragolumabとアテゾリズマブの併用は、標準治療のデュルバルマブ単独と比べて、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長しないことが報告された。第Ⅲ相SKYSCRAPER-03試験の結果から明らかになったもので、全生存期間(OS)も2群間に差は認められなかった。
本試験の主な登録基準は、新規診断の切除不能Ⅲ期NSCLCで、プラチナ系製剤を含む同時併用化学放射線療法を2サイクル以上完遂した後に病勢進行を認めないこと、PD-L1発現状態が明らかであること、ECOG PSが0または1であることなどであった。EGFR遺伝子変異またはALK融合遺伝子を有する患者は除外された。Tiragolumab+アテゾリズマブ併用群(tiragolumab 840 mg + アテゾリズマブ 1,680 mgを4週毎静注)とデュルバルマブ群(10 mg/kgを2週毎または1,500 mgを4週毎静注)に1:1で無作為に割り付けられ、いずれも1年間治療を受けた。主要評価項目は、PD-L1陽性集団(tumour cells ≧1%)および全集団におけるPFS(独立審査機関の判定)、副次評価項目はOS、治験担当医の判定によるPFS、奏効率、奏効期間などであった。
829例が登録され、413例がtiragolumab+アテゾリズマブ併用群に、416例がデュルバルマブ群に割り付けられた。ベースラインの患者背景は両群で均衡しており、年齢中央値はtiragolumab+アテゾリズマブ併用群64.0歳、デュルバルマブ群65.0歳、男性が各群80.1% 対 79.1%、元喫煙者が74.1% 対 73.1%、現喫煙者が20.1% 対 19.7%であった。PD-L1発現は、1%未満が49.4% 対 49.5%、1~49%が25.7% 対 28.1%、50%以上が24.9% 対 22.4%、組織型は扁平上皮がんが59.1% 対 59.9%であった。
解析の結果、PFSおよびOSのいずれにおいても、tiragolumab+アテゾリズマブ併用群に延長効果は示されなかった。PD-L1陽性集団におけるPFS中央値は、tiragolumab+アテゾリズマブ併用群が19.4カ月、デュルバルマブ群16.6カ月、ハザード比(HR)は0.96(95% CI: 0.75 – 1.23、p=0.7586)で、2群間に有意差はなかった。12カ月PFS率は60.0% 対 55.4%、24カ月PFS率は46.1% 対 42.9%であった。全集団のPFSも2群間に差はなく、PFS中央値はtiragolumab+アテゾリズマブ併用群が14.2カ月、デュルバルマブ群が13.8カ月であった(HR 1.00、95% CI: 0.84 – 1.19)。
OSはPD-L1陽性集団でHR 0.99(95% CI: 0.73 – 1.34)、OS中央値はtiragolumab+アテゾリズマブ併用群が未到達、デュルバルマブ群54.8カ月であった。全集団ではHR 0.98(95% CI: 0.80 – 1.20)、OS中央値は各群45.6カ月 対 45.8カ月で、いずれの集団でも2群間に差はなかった。
全集団における治療関連有害事象は、全グレードでtiragolumab+アテゾリズマブ併用群80.3%、デュルバルマブ群67.1%、グレード3~4が13.8% 対 10.7%、グレード5が0.5% 対 1.7%、重篤例が11.5% 対 10.7%、治療中止に至ったのは15.5% 対 9.0%であった。特に注目すべき有害事象(AESI)は、肺臓炎、皮疹、甲状腺機能低下症、肝炎などが主であり、発現頻度は全グレードで各群76.4% 対 62.2%、グレード3~4が10.8% 対 8.7%、グレード5が0.5% 対 1.0%であった。
監修 秦 明登先生のコメント
切除不能局所進行Ⅲ期の標準治療は、化学放射線療法後の免疫療法(デュルバルマブ)による地固め療法である。PACIFIC試験で同治療の有効性が証明されて以来、免疫療法を同時併用する試験や本試験のように地固め療法を強化する試験などが行われているが、未だPACIFIC試験を超えられていない。
抗TIGIT抗体であるtiragolumabは比較第Ⅱ相試験であるCITYSCAPE試験でアテゾリズマブとの併用でpromisingな有効性(特にPD-L1 ≥ 50%で)を示したが、その後に行われた3つの比較第Ⅲ相試験のSKYSCRAPER-01試験(進展型小細胞肺がんでのプラチナ併用療法+アテゾリズマブ+tiragolumabの有用性を検討)、SKYSCRAPER-02試験(PD-L1 ≥ 50%のNSCLCでtiragolumab+アテゾリズマブの有用性を検討)、SKYSCRAPER-03試験(上記)はすべてnegativeな結果であった。