Final overall survival (OS) and safety analysis of the Phase 3 ALEX study of alectinib vs crizotinib in patients with previously untreated, advanced ALK-positive (ALK+) non-small cell lung cancer (NSCLC)
(The Chinese University of Hong Kong)
未治療の進行ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)において、一次治療としてアレクチニブとクリゾチニブとを比較検討した国際共同第Ⅲ相ALEX試験から全生存期間(OS)の最終解析が報告され、アレクチニブ群のOS中央値は81.1カ月であることが明らかになった。統計的有意差は得られなかったものの、クリゾチニブ群の54.2カ月を上回り、延長傾向は中枢神経系(CNS)転移例を含むほとんどのサブグループで示された。
本試験は、無増悪生存期間(PFS)の最終解析(データカットオフ日:2018年11月30日)において、アレクチニブの有意な延長がすでに報告されている(PFS中央値:アレクチニブ群34.8カ月 対 クリゾチニブ群10.9カ月、p<0.0001)1。OSは観察期間中央値48.2カ月の時点で未成熟で、中央値はクリゾチニブ群の57.4カ月に対してアレクチニブ群は未到達であった[ハザード比(HR) 0.67、95% CI: 0.46 – 0.98]1。今回の報告は、観察期間をさらに6年間延長したOSと安全性の最終解析である(データカットオフ日:2025年4月28日)。
対象は、組織学的または細胞学的に確認された進行ALK陽性NSCLCで、ECOG PSが0~2、進行疾患に対する全身療法歴のない18歳以上の患者であった。アレクチニブ群(600 mg 1日2回)とクリゾチニブ群(250 mg 1日2回)に無作為に割り付けられ、病勢進行(PD)、忍容不能な毒性の発現、患者希望による中止、死亡に至るまで治療は継続された。また、PD前のクロスオーバーは認められていなかった。主要評価項目は、治験責任医師によるRECIST v1.1に基づくPFS、副次評価項目は独立審査委員会の評価によるPFS、CNS進行までの期間、奏効率、奏効期間(DOR)、OS、安全性であった。
303例が登録され、アレクチニブ群に152例、クリゾチニブ群に151例が割り付けられた。ベースラインの年齢中央値はアレクチニブ群58.0歳、クリゾチニブ群54.0歳、男性が44.7% 対 42.4%、アジア人が45.4% 対 45.7%であった。IV期が97.4% 対 96.0%、CNS転移例は42.1% 対 38.4%、脳照射歴のある患者は17.1% 対 13.9%であった。
観察期間中央値がアレクチニブ群53.5カ月、クリゾチニブ群23.3カ月の解析において、OS中央値はアレクチニブ群が81.1カ月、クリゾチニブ群は54.2カ月で、HRは0.78(95% CI: 0.56 – 1.08、p=0.1320)であった。7年OS率は48.6% 対 38.2%であった。サブグループ解析でも、アレクチニブ群が概ね優位であった。
CNS転移があった集団のOS中央値はアレクチニブ群63.4カ月、クリゾチニブ群30.9カ月(HR 0.68、95% CI: 0.40 – 1.15)、CNS転移がない集団では94.0カ月 対 69.8カ月(HR 0.87、95% CI: 0.58 – 1.32)、またCNS転移を有し脳照射を受けた集団は92.0カ月 対 39.5カ月(HR 0.62、95% CI: 0.24 – 1.60)、受けなかった集団は46.9カ月 対 23.7カ月(HR 0.73、95% CI: 0.38 – 1.38)で、いずれもアレクチニブ群で延長する傾向が示された。
後治療として1種類以上のALK-TKIを受けた割合は、アレクチニブ群37.5%、クリゾチニブ群47.7%であった。主にクリゾチニブ群ではアレクチニブ25.2%、セリチニブ19.2%、ロルラチニブ11.9%、ブリグチニブ10.6%が、一方アレクチニブ群ではロルラチニブ18.4%、ブリグチニブ10.5%、クリゾチニブ9.2%、アレクチニブ8.6%が使用された。
奏効例におけるDOR中央値は、アレクチニブ群42.3カ月、クリゾチニブ群11.1カ月(HR 0.41、95% CI: 0.30 – 0.56)であった。治療期間中央値は28.1カ月 対 10.8カ月で、有害事象は全グレードで96.7% 対 98.0%に発現した。グレード3以上は57.9% 対 57.6%、投与中止に至ったのは17.8% 対 14.6%、減量を要したのは23.0% 対 19.9%であった。血中ビリルビン増加が、アレクチニブの減量(5.3%)および中止(3.3%)の理由としてもっとも多かった。長期追跡下でも新たな毒性プロファイルは認められなかった。
OSで有意差が得られなかった理由についてMok氏は、クリゾチニブ群のアレクチニブへのクロスオーバーが一因の可能性があると考察した。
1. Mok T, et al. Ann Oncol. 2020; 31: 1056‒1064.
監修 秦 明登先生のコメント
IV期ALK融合遺伝子陽性NSCLCにおける比較第Ⅲ相試験の長期追跡データである。アレクチニブ群のOS中央値81.1カ月は、監修医の知る限りではIV期肺がんにおけるこれまでの最長データと思われ、非常にインパクトのある数値である。
しかしながら、今回の報告ではアレクチニブ群の5年OS率が59.5%とのことだが、同じALK-TKIであるロルラチニブはCROWN試験において5年PFS率で60%を示しており、5年OS率はさらに高いと予想される。有効性だけを見ればロルラチニブが頭一つ抜けている印象だが、実臨床での治療選択は毒性とのバランスも考慮し、SDM(Shared Decision Making)のプロセスを経て行われることになるだろう。