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Lung Cancer Topics 2025 No.1 世界肺癌会議(WCLC 2025)

PL03.07
限局型小細胞肺がんにおける化学放射線療法の寡分割照射と通常分割照射の比較:多施設共同第Ⅲ相試験
Hypofractionated vs conventional fractionated radiotherapy with concurrent chemotherapy for LS-SCLC: A multi-center phase III trial
Nan Bi 先生
(National Cancer Center / National Clinical Research Center for Cancer)

 限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)患者の化学放射線療法において、寡分割照射は通常分割照射と同程度の全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)であることが、中国の16施設で実施された多施設オープンラベル無作為化第Ⅲ相試験から明らかになった。しかしながら、安全性については、寡分割照射のほうが放射線肺臓炎や血液毒性、特にリンパ球減少の発現頻度が有意に低かった。

 本試験は18~70歳のECOG PSが0~1のLS-SCLC患者を対象に、化学療法と同時併用する放射線治療の方法を比較した非劣性試験である。対象患者は、寡分割照射を行う群(HypoRT群、3Gy x 15回、総線量45Gy)と、通常分割照射を行う群(ConvRT群、2Gy x 30回、総線量60Gy)に1:1の割合で割り付けられた。化学療法はエトポシドとシスプラチンまたはカルボプラチンとの併用を3週間おきに4~6サイクル施行し、放射線治療は化学療法の3サイクル目までに開始された。主要評価項目は2年OS割合、副次評価項目は2年PFS割合、毒性などであった。

 2016年11月から2022年12月までに530例が登録され、HypoRT群に261例、ConvRT群に269例が割り付けられた。患者背景は両群で均衡が取れていた。男性はHypoRT群76.2% 対 ConvRT群79.9%、喫煙歴は71.3% 対 71.4%、ECOG PS 0が75.5% 対 73.2%、TNMステージⅢ期が90.0% 対 92.6%、予防的全脳照射(PCI)を施行した割合は55.2% 対 52.8%であった。

 観察期間中央値は43.4カ月で、OS中央値はHypoRT群40.2カ月、ConvRT群47.9カ月(ハザード比[HR] 1.04、p=0.752)と両群とも良好であり、HypoRT群の非劣性マージンを満たさなかったが数値的にはConvRT群と同等であった。2年OS割合はHypoRT群68.9% 対 ConvRT群68.0%、5年OS割合は42.4% 対 43.9%であった。

 PFS中央値はHypoRT群16.5カ月 対 ConvRT群18.0カ月(HR 1.06、p=0.567)、2年PFS割合は40.5% 対 44.3%、5年PFS割合は31.5% 対 31.7%と2群同程度であった。

 一方、急性の有害事象(AE)の発現率はグレード2以上がHypoRT群86.2% 対 ConvRT群95.2%(p<0.001)、グレード3以上が48.7% 対 67.7%(p<0.001)で、いずれもHypoRT群が有意に低かった。特に血液毒性の発現率が低く、グレード2以上が78.9% 対 91.8%(p<0.001)、グレード3以上が43.7% 対 65.8%(p<0.001)、リンパ球減少症はグレード2以上が60.9% 対 77.0% (p<0.001)、グレード3以上が27.6% 対 50.2%(p<0.001)であった。グレード2以上のリンパ球減少症の発現率を時点ごとに見ると、放射線療法中は60.5% 対 88.8%(p<0.001)、放射線療法から1カ月後は34.3% 対 48.7%(p<0.01)、6カ月後は14.4% 対 28.7%(p<0.01)と、HypoRT群のほうが有意に低かった。

監修 善家 義貴先生のコメント

LD-SCLCにおいて、依然として寡分割照射は標準治療であるが、通常分割照射も治療成績は同等であり、特に海外では広く実施されている。ADRIATIC試験の結果から、「化学放射線療法後の2年間デュルバルマブの投与」が標準治療となり、照射方法によらず、デュルバルマブを2年間投与することが重要である。